【親知らずの抜歯まとめ】

親知らずの痛みや腫れでお悩みの方がいらっしゃるかと思います。

「親知らずの抜歯は大したことなかったよ」という方や「とても腫れて、痛いし大変だった」と人によって感想がマチマチだと思いませんか?

実は、親知らずの抜歯はその「生え方」によって難易度に違いがあるのです。

口腔外科医がわかりやすくご説明しますね。

*和歌山市のふぁみりー歯科クリニックでは、口腔外科医が在籍しているので難しい親知らずでも抜歯が可能です。

親知らずとは

親知らずとは「智歯」「第3大臼歯」ともいい、一番最後に生えてくるもっとも後ろにある奥歯です。

概ね20歳前後に生えてくることが多く、乳歯と違って「親が気がつく年齢に生えてこない」ことから、親知らずと名付けられたという由来があります。英語では「wisdom tooth」といいます。

昔の人は親知らずがまっすぐに4本きっちり生えている人間が多かったのですが、現在は食習慣の変化から顎の発達が小さく、親知らずがまっすぐ生えない人・生えてこない人・親知らずの卵さえない人(先欠)が増えています。

これらにより、様々な親知らずによるトラブルがあります。

親知らずが引き起こすトラブル

親知らずが引き起こす、特に多い3つのトラブルをご説明します。

智歯周囲炎

親知らずが引き起こすトラブルで最も多いのが「智歯周囲炎」です。

20歳前後になり親知らずが生えだしてくると、歯ぐきから半分顔をだした状態になったり、斜めに生えてきたりします。

その歯ぐきと親知らずの歯冠との間に食べかすや歯垢が入り込み、きちんと歯磨きを行えないことが続くと、細菌が増殖して炎症を起こします。それが智歯周囲炎です。

大人でも「「ストレスが続いている」「睡眠不足」「栄養不足」などで免疫が低下すると、40歳を超えても智歯周囲炎が起こることもあります。

症状としては、「歯ぐきの痛み」「腫れ」が主で、放置すると顔・顎全体に広がり、点滴入院が必要となることもあります。親知らずのあたりが痛く、あれ?おかしいな?と思ったらすぐに歯科医院を受診してください。

虫歯

次に多いのが、親知らずに付随する虫歯です。

一番奥まった場所にあり、歯磨きをしづらいことから、親知らず自体の虫歯になる人がとても多いです。

また、親知らずが斜めに生えていることで、親知らずの隣にある「第2大臼歯」がしらないうちに虫歯になってしまうケースもよくあります。

斜めに親知らずが生えていると、第2大臼歯の横の面(親知らずとの接触面)を歯磨きすることはまず不可能です。食べかすが溜まり、普段の歯磨きも適当でいると、ほぼ高確率で虫歯ができてしまいます。場合によっては、しらないうちに「第2大臼歯の神経まで虫歯が進行していた」というケースもあります。

斜めに生えている親知らずは第2大臼歯を虫歯にしてしまうリスクが高まるので、抜歯したほうがよいことが多いです。

歯列不正

歯列不正も親知らずが引き起こすトラブルの1つです。
親知らずが斜めに生えていると、生えてこようとする方向が「第2大臼歯」を押そうとする方向になります。

そうすると、第2大臼歯が押され、第1大臼歯が押され・・とだんだん前の歯が押されてきて、全体の歯が動かされてしまいます。

その結果、歯列不正が起こるのです。特に前歯がガタガタになるケースが多いです。

親知らずが生えてくる年齢で、「おや?最近前歯が少しガタついているような気がする」という方は、親知らずを疑ってください。

歯科医院でX線写真を撮影すれば、親知らずがどのような方向に生えているかすぐにわかります。少しでもおや?と感じた方は、受診されてください。

なぜ親知らずは人によって痛み・腫れ具合が違うのか

親知らずの抜歯を経験した人の感想を聞くと、「とても簡単ですぐ抜けた」「痛くなかった」という人もいれば、「とても大変で時間がかかった」「すごく腫れて痛かった」と様々ですよね。

どうしてこんなに人によって感想が違うのかわかりますか?

それは、親知らずの生え方によって種類があり、抜歯の難易度が異なるからなのです。

親知らずの種類

親知らずの生え方によって、3つに大きく分けられます。

萌出

1つ目は、完全に親知らずが生えて、歯ぐきから顔を出しているケースです。
他の歯と同じようにまっすぐ生えていると、最も抜きやすいです。特に、上の親知らずのほうが骨が柔らかいため、スムーズに抜きやすいです。上の親知らずはトラブルが少ないです。

半埋伏


半埋伏とは、親知らずの歯冠が半分歯ぐきから顔を出しているが、半分は埋まっているケースです。斜めに生えていることが多いです。歯ぐきが歯冠の一部に覆いかぶさっているため、食べかすや歯垢がたまりやすく、智歯周囲炎を引き起こしやすいケースです。

中途半端に半埋伏の親知らずがあると、トラブルを起こしやすいため、あれ?と思ったらすぐに歯科医院を受診されることをおすすめします。

完全埋伏


完全に歯ぐきの中に親知らずすべてが埋まっているケースが完全埋伏です。
完全埋伏歯の場合、X線写真を撮影しないと発見することはできません。
完全埋伏歯で何も症状がない場合は、そのまま様子見でOKなことが多いです。

そのほかの難しい抜歯

上記の生え方3種類の他にも、根っこの形によって抜歯の難易度が変わるケースがあります。
これらは生まれつき(生えた時点)の根の形なので、どうすることもできません。

まっすぐ生えているのに、なかなか抜けない抜歯の場合は、下記のような根の形の場合があります。

根の肥大

根が肥大していると、抜歯時に抜こうと引っ張っても、根が大きいためなかなか抜けません。

根の湾曲

根が途中で曲がっている場合、途中で引っかかってしまうため、なかなか抜けません。途中で根の先が折れてしまうリスクがあるので、慎重に抜かなくてはいけません。

根が骨を抱えている

根が骨を抱え込んでいる場合は、骨ごととらないといけないため、非常に難易度が高くなります。

根が開脚している

親知らずの根は1本にくっついていることもあれば、3本に分かれていることもあります。

3本の根が開脚している場合、物理的に抜けにくいため、こちらも時間がかかります。

なぜ親知らずは大学病院で抜いてと言われることが多いのか

親知らずの痛みや腫れで歯科医院を受診すると、X線写真を撮影した後に「難しい親知らず(施設上無理)なので、大学病院を紹介します」と言われた方が多いのではないでしょうか?

これには上記のような「親知らず抜歯が難しい」という理由と、下記の「抜歯に伴うリスク」が関係しています。

多くの一般歯科では、普通の抜歯は行えます。施設上も本当は特に問題ありません。
しかし、歯科医師の技量によって、難度の高い親知らずの抜歯を行えないことが多いのです。また、時間をかけるわりには歯科医院に入る料金は同じ(保険適用)なので、なるべく「リスク・トラブルを避けたい」ことや「時間がかかる作業を避けたい(治療時間が遅くなると、他の人の治療に影響する)」ことが関係しています。

親知らず抜歯のリスク

では、親知らずの抜歯時のリスクにはどんなものがあるかご説明します。

神経麻痺

下の親知らず抜歯時のリスクでよくいわれるのが、「神経麻痺」です。

下顎の骨の中に神経の通り道があり、「下歯槽神経」が走っています。この神経と親知らずが近かったり、接触している場合、抜歯時に根が神経に触れてしまうことがあります。その結果、神経麻痺が起こることがあります。

神経麻痺の症状としては、「下顎の前の方(オトガイ部)や下唇を触れた時の感覚が鈍い=知覚鈍麻」で、1%程度の確率で生じるといわれています。時間がたつと症状は消失しますが、経過観察が必要です。

X線写真を撮影して、下の親知らずと下歯槽神経が近接しているように見えた場合、高確率で大学病院へ紹介されることが多いです。(リスクを避けるため)

上顎洞との交通

上の親知らずの根が上顎洞という副鼻腔と交通している人が稀にいます。
そのような親知らずを抜歯した場合、口と副鼻腔がつながってしまい、「口から鼻に息や水がもれる」という症状がでます。ほとんどの場合、自然にこの穴は閉鎖していきます。

出血

下の親知らず抜歯の際、下歯槽神経と同じく動脈も近接していることがあります。

この動脈が傷つくと、多量の出血が生じますが、口腔外科医の場合は適切に処置が可能なので特に問題ありません。

親知らず抜歯の流れ

それでは、親知らずの抜歯の流れをご説明します。

1.初診

親知らずの違和感や痛み・腫れで来院された場合、まずは問診で症状をお聞きします。


その後、口腔内診査とX線写真の撮影を行い、状態を診断します。

この結果、腫れが大きい場合はすぐに抜くと痛みが強くでることが大きいため、まずは投薬で炎症を抑えることが多いです。

特に腫れも大きくなく、健康状態も良好ですぐに抜けると判断し、状況も整っている場合は、当日抜歯することもあります。(歯科医師の判断によります)

他に全身疾患で投薬中である場合は(ワーファリン服用中など)、すぐに抜けないため、他院の医師へ状況確認をしてからになります。

一般歯科では抜けないと診断された場合は、大学病院等への紹介状をもらうことになります。

2.麻酔

抜歯時当日、まずは麻酔を行います。

表面麻酔で注射針刺入の痛みを和らげさせてから(医院によります)、局所麻酔を行います。

下顎の親知らずを抜歯する場合は、伝達麻酔(大きな神経全体を麻酔する)を行うこともあります。

3.歯肉切開

親知らずがまっすぐ生えておらず、半埋伏歯や横に生えていたりする場合は、歯ぐきを切開します。(麻酔をしているので全く痛みを感じません)

歯ぐきを切開すると、埋まっていた親知らずがよく見えて抜きやすくなるためです。

4.骨削除

親知らずが骨に埋まっていたり、骨を抱えていたりする場合は、歯槽骨を一部削除する場合があります。ケースバイケースのため、行わないこともあります。

5.抜歯

親知らずを抜きます。

6.止血

無事に抜いた後、ガーゼをかんで止血させるか、歯ぐきを切開している場合は縫合を行います。

止血が確認されたら、抜歯後の注意事項(普段の過ごし方)の説明を受け、お薬をもらい終了です。

7.翌日以降

抜歯翌日以降は、傷口の確認と消毒を行います。
縫合を行なっている場合は、数日ー1週間程度を目安に抜糸を行います。

抜歯後にしてはいけないこと・注意事項

親知らずの抜歯後にしてはいけないこと、注意事項をご説明します。

お酒をのむ・当日の入浴

アルコールや当日の入浴は禁止です。
アルコールや入浴で体が温まると血圧が上昇し、再出血する可能性があるためです。
また、ドライソケットという強い痛みが出現する副作用が出現しやすくなります。

*ドライソケットとは
抜歯後は、歯を抜いた穴に血餅が形成され、治癒していきます。

しかし、この血餅が脱落したり十分に形成されないと、歯槽骨が露出して強い痛みが出現します。これがドライソケットです。
強いうがいやアルコールなどで発生しやすくなるので、十分注意しなければなりません。
当日はシャワー程度で済ました方がベストです。

強いうがい

強いうがいをすると、止血時の血餅(血が固まったもの)がとれて、再出血やドライソケットの原因となりますので禁止です。

触る

歯ブラシや舌で傷口を触るのも、血餅がとれてしまうので禁止です。

抗生剤をちゃんとのむ

投薬された抗生剤はきちんとすべて飲み切りましょう。

「抗生剤はなるべく飲みたくない」という考えにより痛みどめだけ飲んで、抗生剤は飲まないという人が稀におられます。勝手にこれをすると、痛み止めの中にある「免疫を抑える作用」だけが強くでてしまい、細菌が繁殖し、炎症が広がってしまいます。

医師に出された指示通りの薬をきちんと飲みましょう。

当院では親知らずの抜歯が可能です

多くの歯科医院では、難しいケースの場合、和歌山市内の大学病院へ紹介することになり、遠方で待ち時間の長い通院が必要になってしまいます。

抜歯の経験が多い歯科医(口腔外科医)ほど、スムーズにスピーディーに処置でき、手術時間が短くなります。その結果、術後の痛みや腫れも少なくなります。また、抜歯周辺の神経血管に詳しいため、難抜歯によるトラブルが起きにくいです。

当院では口腔外科出身で、和歌山県立医科大学付属病院の研究医でもある院長が担当しますので、難しい親知らずの抜歯でも当院で行うことができます。

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ふぁみりー歯科クリニック

歯科・小児歯科・口腔外科

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